春が来たら、桜の花びら降らせてね
「これ……朝顔……?」
朝顔に目を奪われたまま、夏樹君に尋ねた。
「地面に落ちてたやつで悪い、でもせっかく綺麗なのに地面に落ちてるだけなんて勿体ないしな。それに、冬菜に似合うと思った」
夏樹君は私のために朝顔をわざわざ拾ってくれて、似合うからと飾ってくれた。
君が私のために行動を起こすたびに、私は泣きたくなるほど嬉しくなる。
それに、きっと君は気づいてないんだろうな。
「私なんかのために……」
朝顔を傷つけないように、指でそっと優しく触れる。
宝物がまたひとつ増えた。
君と重ねていく日々が、光の花びらになって私の中に降り積もる。
「私なんか、じゃねーの」
「いたっ」
夏樹君に鼻をピンッと指で弾かれる。
「冬菜は、自己評価低すぎなんだよ。お前は可愛くて、心も綺麗で、優しくて、とにかくすげーヤツなわけ」
「そ、そんな大層な人間じゃ……むぐっ」
今度は、口を夏樹君の大きな手で塞がれた。
夏樹君って、最初会った頃より意地悪になった気がする。
それが親しくなれたからだと思うと、なんだかくすぐったくて、言い表せない熱が胸のうちで広がっていく。