春が来たら、桜の花びら降らせてね
愛読書の一節を思い出した。
【恋はわがままに燃え、想いを押し付ける一方的で熱い太陽のような感情である。】
さっき、どんな形でもいいなんて言ったけど嘘だ。
本当は私……君の中の特別になりたいと思ってる。
それはきっと、私の一方的な想いで、押し付けで、太陽のように熱い感情。
この気持ちはきっと……〝恋〟だ。
「っ……花も、ありがとう」
動揺を隠すように言った。
そっか、私は夏樹君を好きになってしまったんだ。
気づいたら、もう止められない。
溢れてくる想いが、熱い血潮のように全身に駆け巡る。
「私、夏樹君からもらってばかりだね」
もう一生しないと思っていた恋ですら、君はくれた。
「俺は……冬菜になにかしてやりやくて、しょうがねーんだ」
夏樹君の長くて、細くて骨ばった指が、目尻にぷっくりと膨れて留まる私の涙を掬った。