春が来たら、桜の花びら降らせてね
❁Chapter3❁
光と闇は、紙一重
【冬菜side】
肌にまとわりつくような湿気が、さらりとした気持ちのいい風へと変わった9月。
夏休みは夏樹君や琴子ちゃん、誠君や琉生君たちと一緒に、人生初めてのカラオケに行ったり、夏樹君のバイト先に遊びに行ったりして満喫した。
たぶん、今まで生きてきた中で、初めて輝いていた夏だったと思う。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去るというのは本当で、夏休みも昨日で終わり、今日から新学期がやってきた。
「冬菜、はよ」
「っ、あ!」
夏樹君より先に登校していた私は、読書しているところに急に声を掛けられて、肩をビクつかせる。
振り向けば、夏樹君がこちらに笑顔を向けながら、机の横にスクールバックをかけていた。
驚いたのは、単に場面緘黙症の症状が出たとかではなくて、私の中に芽生えた恋心のせい。
夏樹君を見ると、謎の動悸に見舞われるのだ。
私は教室では話せないので、スマホのメモアプリで『おはよう』と打って見せる。