春が来たら、桜の花びら降らせてね
「冬菜最近、様子おかしくね?なんか、あったのか?」
最近とは、きっと夏休みにみんなで遊んだ時のことだろうな。
みんなで行ったカラオケで、夏樹君の隣に座った私は、デンモクを受け取ろうとして手が触れて、慌てて飛びのき、そのまま琴子ちゃんの膝の上に座るという失態を犯した。
琴子ちゃんは『琴子の膝は、ふゆにゃんの特等席に決定!』とか言って笑ってたけど、私はそれどころじゃなくて笑えなかった。
ちなみに、ふゆにゃんとは琴子ちゃんが考えた新しい私のあだ名だ。
もろもろ思い返すと、恥ずかしくて死にそうになる。
「おーい、冬菜応答しろ!」
「う……!」
声を掛けられてまた、私は椅子の上で飛び跳ねた。これで何度目だよと、自分で言って、勝手に落ち込む。
「う、ん」
聞いてる、聞いてる。
そんな風に何度も頷いて誤魔化そうとすると、疑わし気な夏樹君の顔が、私の顔にズイッと近づいた。
その瞬間に、ドキンッ!と一際大きな鼓動の高鳴りが響く。
「っ……!」
近い、顔近いよ夏樹君!
驚いて固まる私に、夏樹君は手を伸ばして、ツンツンと頬を指でつついてきた。