春が来たら、桜の花びら降らせてね
「ふゆにゃん、おはー!」
琴子ちゃんが私の首に抱き着いてくる。
私は、おはようの挨拶の代わりに、笑顔を返した。
「ふゆにゃん、今日ねすっごく誠君がカッコよかったんだよーっ」
琴子ちゃんの報告に、それはいつもだろうと思いながらも相槌を打つ。
ノロケを聞くのも、気づけば琴子ちゃんや誠君と出会ってからの日課になっていた。
「危ないから歩道側を歩きなって、手ぇ引いてくれてね!もう、まじキュンキュンって感じなのっ」
何より、何も返事を返せない私に、琴子ちゃんや誠君は諦めず話しかけてくれる。
このままの私でもいいよと言われているみたいで、みんなのそばにいると、心がポカポカと温かくなった。
「ふゆにゃんも恋してる目をしてる」
「っ、え!」
誠君が小声でニヤッと笑った。
もちろん、その隣にいる琴子ちゃんも同じ顔で笑っている。
ギクリとして、私は視線を彷徨わせた。
どうして、バレてるんだろう、私、何も言ってないのに……!
猛暑の夏は去って秋が来たというのに、ダラダラと汗が止まらない。