春が来たら、桜の花びら降らせてね
「おい、なにコソコソ話してんだよ?」
すると、仲間外れにされていた夏樹君が不満そうな顔で私たちの輪に入り込んできた。
「別にー?夏樹のニブニブ星人ってあだ名を、クラス中に広めよう作戦とかしてないよ」
「いやお前、それ絶対してただろ」
「やだな、俺だって夏樹の話で無駄な時間使いたくないよ」
「誠、お前さりげなくひでぇな」
空気を読んだように誠君は話を打ち切って、何事もなかったかのように振る舞ってくれた。
それに小さく息を零すと、いつの間にか夏樹君が目の前に立っていた。
「あっ……」
「って、冬菜顔色悪いぞ」
悲鳴を上げるより先に、夏樹君が心配そうに声をかけてきた。
夏樹君は、こうやって私の変化にすぐに気づいてくれる。
私はそのたびに夏樹君が好きになってしまうから、辛い。
だって、夏樹君は私に特別な感情なんて抱いていない。
しいて言うのなら、贖罪のためなんだろう。
だから、君をこれ以上好きになることが、嫌だった。
いっそ、離れた方が楽なのだろうかなんて。
そんなの無理だってわかってるくせに、言ってみる。
悪あがきだ、あきらめきれない恋から逃げられないことへの。