春が来たら、桜の花びら降らせてね
「ちぇっ、もうちょい花咲かじいさんやるつもりたったのによ」
花咲か……じいさん?
隣の席に座った夏樹君は私の方を見て、いたずらがバレた子供みたいに肩を竦めた。
頭の中、年中お祭り状態の夏樹君に私は心底呆れる。
「でもまぁ、3年あるしな。これから全力で冬菜のことを笑顔にすっから、よろしく!」
全力で笑顔にするとか、やめてほしい。
胸の奥で何かがしきりにざわついて、落ち着かない。
この気持ちはなんだろうと考え始めた思考を絶つように、目の前で歯を見せて笑う夏樹君から目をそらした。
初対面なのにどうして、私のために何かをしようとするのだろう。
たくさんの疑問が浮かんで、動悸がする。
得体のしれない存在、なのに害はなさそうで、ひたすらに戸惑う。
──ねぇ、君は一体誰……?