春が来たら、桜の花びら降らせてね
残る傷跡、最後の涙
【冬菜side】
入学式の翌日の空は、透き通るような青みの帯びた空だった。
「行ってきます」
見送ってくれたお母さんに背を向けて、ゆっくりと歩き出した。
住宅街を抜けて、大きな道路沿いの道に出ると桜並木がある。
駅と反対方向に向かう私は、前から群れのように歩いてくる人の顔すべてが、私を見ているように思えてこの道が嫌いだった。
道行く人の視線も話し声も、私に向けられているような気がして、とてつもない不安に駆られる。
ここ以外に学校まで行ける道はなく、私は見たくないモノから目をそらすようにして顔を上げた。
見上げた先には、まだ鮮やかさを失っていない桜の花が咲いている。
「桜……」
桜を見ると、思い出す。
そういえば昔、小学生の時のことだ。
落ちた桜の花びらで、絨毯を作ってもらったことがあったな。