春が来たら、桜の花びら降らせてね
『もう、私の世界を壊さないで』
「っ……冬菜、俺はお前の世界を壊したかったわけじゃない!」
『もう、やめて』
「冬菜っ……」
名前を呼んで言葉を失った夏樹君。
あの日とは違って、今度は私から背を向けた。
これは惨めだと思いたくない、精一杯の私の意地だ。
「なら、冬菜はずっと一人ぼっちでいる気かよ!!」
夏樹君が私の背中に叫ぶ。
そうだよ、私と夏樹君の歩く道は一生交わらない。
私が辿った道を、どんなに夏樹君が追いかけてきても。
私に、立ち止まる意思も、振り返る意思もないから。
「俺は、冬菜を……どうすればっ」
夏樹君は、私を追いかけてこなかった。
でも、それでいい。
私が目指す先は、誰もいない場所であり、ひとりぼっちになるための道だから。
──だから、さよなら夏樹君。