春が来たら、桜の花びら降らせてね
『昼休み、一緒に校庭行こうぜ』
『…………』
でも……と、戸惑うような瞳に俺は笑った。
『桜の絨毯作ってやる!』
『…………』
冬菜は新芽が花咲くようにフワリと笑った。
奇跡を目の当たりにしたかのような、そんな胸の高鳴りを俺は感じた。
俺たちはみんなにバレないよう、顔を突き合わせて笑い合う。
この瞬間が、永遠に続けばいい。
そう思うほど、俺は君に惹かれていたのだ。
そして約束の昼休み。
給食を食べ終わると、俺は冬菜の手を引いてさっそく校庭へとやってきた。
桜の木の下、降り積もる淡い薄紅色の花びらをかき集める。
一緒に集めようとした冬菜には、木陰に座っているよう声をかけた。
俺が冬菜にプレゼントしたかったからだ。
絨毯を作る俺を、桜の木の下に座る冬菜が穏やかな表情で見つめている。
温かくて、ゆっくりと時間が流れていた。
俺は特に言葉を交わしているわけじゃないのに、幸福感に満たされる。