春が来たら、桜の花びら降らせてね

『昼休み、一緒に校庭行こうぜ』

『…………』

でも……と、戸惑うような瞳に俺は笑った。

『桜の絨毯作ってやる!』

『…………』

冬菜は新芽が花咲くようにフワリと笑った。
奇跡を目の当たりにしたかのような、そんな胸の高鳴りを俺は感じた。

俺たちはみんなにバレないよう、顔を突き合わせて笑い合う。

この瞬間が、永遠に続けばいい。
そう思うほど、俺は君に惹かれていたのだ。




そして約束の昼休み。
給食を食べ終わると、俺は冬菜の手を引いてさっそく校庭へとやってきた。

桜の木の下、降り積もる淡い薄紅色の花びらをかき集める。

一緒に集めようとした冬菜には、木陰に座っているよう声をかけた。

俺が冬菜にプレゼントしたかったからだ。
絨毯を作る俺を、桜の木の下に座る冬菜が穏やかな表情で見つめている。

温かくて、ゆっくりと時間が流れていた。
俺は特に言葉を交わしているわけじゃないのに、幸福感に満たされる。

< 175 / 277 >

この作品をシェア

pagetop