春が来たら、桜の花びら降らせてね
『なら、原田も一緒にやろーぜ』
そう言って冬菜を誘うと、冬菜は無言で俯く。
この時の俺は、冬菜が絶対喜んでくれると思っていた。だから、冬菜の表情が曇ったことが不思議でならなかった。
でもきっと、冬菜は怖かったんだ。
人に拒絶されること、幻滅されることが。
なのに俺は、何も知らずに冬菜を振り回し、苦しめた。
全部俺の物差しで、嬉しいに決まってるって決めつけて。
知らないことは罪だと、俺はこれから、身を持って知ることになる。
『ねぇ、喋んない原田なんて置いて早く鬼ごっこやろうよ』
『園崎……』
その中にいた園崎が、冬菜をチラッと見て、俺の手を引く。
手を引かれるまま、冬菜を振り返れば、悔しそうに俯いていた。
『は、原田も行こうぜ!』
たまらずそう声をかけても、冬菜は無言で首を横に振り、まるで「楽しんできて」とでも言うように無言で微笑んだ。
その笑顔が寂しげで、胸が締め付けられた俺は、無意識に胸をおさえる。