春が来たら、桜の花びら降らせてね
『ねぇ、なんか佐伯と原田仲良すぎない?』
『は、はぁ!?』
すると、園崎が疑うように言った。
それに周りにいたクラスメートの顔に、好奇心と言う残酷な笑みが浮かぶのを、俺は見逃さなかった。
『んなわけねーだろ、こんな地蔵みてぇなヤツ!』
からかわれるのを恐れた俺は、ムキになって酷いこと言ってしまう。
その時の冬菜の顔は、見ていない。
見れなかったのだ、きっと傷ついた顔をしているから。
『地蔵とか、ひっどーい!でもピッタリじゃーん!』
『地蔵、地蔵ー!』
園崎と他のクラスメートたちが笑う。
止めないと、そう思うのにそれが出来なかった。
自分が空気を乱して、みんなに嫌われたくなかったからだ。
『原田地蔵って呼ぼーぜ』
心とは反対に、口は最低な言葉を吐く。
傷つけたくないはずなのに、俺は好きな女の子を苦しめる言葉を浴びせ続けた。
俺の言葉に周りが笑いに包まれて、冬菜はその場から駆け出した。
その背中を追いたかったのに追えなかった。
そして、冬菜がまた、俺の言葉で泣きながら教室を飛び出したあの冬の日。
俺は後悔に耐えきれず、ついにその後を追った。