春が来たら、桜の花びら降らせてね
『泣いてる……のか?』
そんなの当り前なのに、俺は廊下で立ち尽くしていた冬菜にそう声をかけた。
そう言った途端、冬菜は怒りを堪えるように俺を振り返る。
あの顔を、俺は二度と忘れられない。
花が咲くように優しく笑う女の子だった。
その子に俺は、永遠に笑えない呪いをかけ、暗闇に閉ざされた世界へと落とした。
俺は……この子にとっての悪魔だ。
最低で汚い、堕ちるとこまで堕ちた俺は、もうきっと君に笑いかけてもらえることも無いのだろう。
深い絶望感に、抵抗できないまま沈んでいくようだった。
『原田、俺……』
本当は、こんなつもりじゃなかったんだ。
そう言い訳しようとした自分が、嫌になる。
結局俺は、あの時はクラスの連中に、今は冬菜に良く思われたいと思って行動している。
自己中心的な自分に、吐き気がした。
口を開いたら言い訳ばかりが口をついてしまいそうで、俺は奥歯をギリッと噛みしめ俯く。