春が来たら、桜の花びら降らせてね
『ねぇ~、なんか言いなよ、原田地蔵』
『…………』
男の子に便乗したのは、クラスの中心にいる目立ちがりやの女の子だ。
『原田地蔵』というのは、喋らない無表情な私が、地蔵みたいだからという理由でその男の子につけられたあだ名だ。
みんなは私を理由に笑いを作り、話題を作り、居場所を作る。
だから、私はいつも一人だった。
『原田地蔵、なんか泣きそうじゃね?』
男の子は、私の顔をのぞき込んで鼻で笑う。
『…………』
やめて、泣くところなんて見られたくないっ。
こんな私にだって、意地がある。
──ガタンッ。
私は勢いよく席を立った。
そのまま、逃げるように教室を飛び出す。