春が来たら、桜の花びら降らせてね
『こんなところにいた!原田地蔵なんてほっといて、早く教室戻りなよ。これから、みんなで合唱会の練習だって!』
そんな時、俺を追いかけてきたのか、園崎が現れて俺の腕を引っ張る。
『ねぇ、早く行こっ』
本当は、まだここを離れたくない。
離れてはいけない気がした。
『お、おう……』
なのに俺は、冬菜から目をそらして背を向ける。
そして、園崎と教室の方へと歩いていく。
俺は、どこまでも最低で最悪な人間だ。
こんな俺が、冬菜に駆け寄る権利なんてあるのか?
……いや、これも言い訳だ。
俺は冬菜よりも、クラスでの居場所を選んだ。
俺は今、冬菜とは真逆の道を歩こうとしている。
俺たちの歩く道は一生交わることはない。
そう、俺がくだらない薄っぺらい体裁で固められた道を捨てない限り、永遠に。
不意に、俺は立ち止まり冬菜を振り返った。