春が来たら、桜の花びら降らせてね
『佐伯、まだ原田地蔵が気になってんの?』
『そんなんじゃ……ねぇし』
冬菜の背中は太陽の光の当たらない、暗い廊下の先へと消えようとしている。
あの子は、これから誰もいない場所へ、ひとりぼっちになるための道を歩んで行ってしまうんだろう。
『俺の、せいで……』
ズクリと心臓に棘が刺さり、根を張るように絡みつき、締め付ける。
そして、長い時間をかけて俺は、罪の花を胸に咲かせながら、今まで生きてきた。
中学は冬菜とは別の学校だった。
時が忘れさせてくれる、そんな風に過去から目をそらして生きていたけれど、やっぱり忘れられなかった。
――君への恋心も罪悪感も……。