春が来たら、桜の花びら降らせてね
切なき、紅葉の便り
【冬菜side】
木という木が色鮮やかな紅葉に変わり、世界をくれないに染める。
風が少しだけ冷たくなり、秋の深まりを感じる頃。夏樹君と話さなくなって、早くも2週間が経っていた。
夏樹君は時々、何か言いたそうに私を見るけれど、それに気づかないふりをして視線をそらした。
今はホームルームで文化祭の役割決めをしている。
担任の保坂先生は委員会が入ったためにおらず、代わりに現代文の時間、私に朗読を強要した、あの教育実習生がいた。
「うちのクラスでは、シンデレラの劇をやります」
「役決めをしたいんですが、立候補、推薦なにかあれば手を上げてくださーい」
文化祭実行委員の2人が、役の名前を黒板に書いていく。
それを、私には関係の無い行事だと、どこか他人事のように見つめていた。
「シンデレラは、園崎さんがいいんじゃない?」
「そうだね、ハキハキしてるし」
「美人だし!」
園崎さんは転校してきてすぐ、クラスの人気者になっていた。
美人な容姿に、誰かをネタにしてみんなの気を引くのが得意な園崎さんは、早くもクラスの中心人物になりつつあった。