春が来たら、桜の花びら降らせてね
「は-い、琴子も賛成っ!」
琴子ちゃんも誠君と同じように手を上げる。
誠君、琴子ちゃん……。
私のためにしてくれたことだと、すぐにわかった。
どうして、そこまでしてくれるのだろう。
人は大きな存在、いわゆるその環境の王様に流される。
その人が言ったことは絶対で、王様が右を向けば右を向き、左を向けば、左を向く生き物なのだ。
その王様は今、このクラスという環境では園崎さん。
従った方が、みんなは孤独にならないから、楽なはずなのに。
「本当、バカップルうざぁい~っ、咲、反吐が出そう」
「あれ、今の相沢さんの真似?」
「ぶはっ、超似てる!」
園崎さんは琴子ちゃんの真似をして、からかう。みんなも馬鹿みたいに笑ってくだらないと思った。
前に、夏樹君が罪を打ち明けてくれた時、こういう風に私の気持ちを考えてくれて、優しくなろうって変わってくれる人もいるんだって思った。
なのに、この人はやっぱり変わらない。
何も感じていない人もいる、それが現実だった。
私はスクールバックを手に静かに席を立つと、黒板の方へと歩いていく。
みんなの視線が追ってくるのがわかり、足が震えそうになった。
それでも、早く退散したかった私は、黒板の前にたどり着くと、チョークを手に取り、『衣装係』の役割の下に自分の名前を書いた。