春が来たら、桜の花びら降らせてね
「えっと……原田さんは衣装係でいいの?」
文化祭委員の言葉に、私はコクリと頷く。
そして、チョークのついた手を叩きながら、教室の出口へと歩いていった。
「衣装係とか面倒だしラッキーだね」
「進んでやるとか、やっぱ根暗ー!」
背中越しにクラスメートのヒソヒソ話が聞こえたけれど、気づかないふりをして教室を出た。
それと同時に、授業終了の鐘が鳴る。
ここからはもう昼休み、どこへ行こうと先生に咎められることもない。
それに、あの教育実習生がわざわざ私を追いかけてくることもないだろう。
たぶん、前に恥をかいてるから、出来るだけ私には関わりたくないはずだ。
「あれ、冬菜ちゃん?」
廊下を歩いていると、誰かに声を掛けられて振り向く。
そこにいたのは購買帰りなのか、ビニール袋を手に持った琉生君だった。