春が来たら、桜の花びら降らせてね
「やっぱり冬菜ちゃんだ」
私の顔を見ると、嬉しそうな顔で琉生君が駆け寄ってくる。
そういえば、琉生君と話すの久しぶりだったことに気づいた。
あの体育祭以来、うちのクラスにもあまり来なくなったのだ。
「なんか久しぶりだな」
「っ……ん」
私はぎこちなく笑って頷いた。
好きだと言われた手前、どう接していいのか戸惑っていたからだ。
「……やっぱり、気ぃ遣うよな。だと思って遠慮してるつもりだったんだけど……冬菜ちゃんの姿見たらつい、声かけてた」
苦笑いの琉生君に、私は目を見張る。
もしかして、クラスに来なくなったのも、私に気を遣わせないためだった……?
その優しさに、申し訳なさが膨らんでいく。
私の知らないところで、琉生君を傷つけていたのかもしれないと。
「そういえば、あれから夏樹とはどうなったんだ?」
「っ……!」
今はあまり触れられたくない夏樹君の話題が出て、心臓がバクバクと大きく鳴り出す。
なんて返事しようか考えていると、「冬菜!」とまた名前を呼ばれた。
私は琉生君と同時に声の主を振り返る。
そこには、肩で息をする夏樹君本人がいた。