春が来たら、桜の花びら降らせてね
『っうぅっ……』
走りながら、私は耐えきれず泣いてしまった。
悔しくて、どうして私なんだろうと何度も嘆く。
そんな自分が惨めで、走る気力もなくなった私は廊下の真ん中で立ち止まった。
この世界は、黒く汚い。
馬鹿な担任は『面白いニックネームつけてもらえて良かったな!』なんて、あたかも気さくな教師を演じる。
何も知らないくせにと、心で何回も悪態をついた。
あげく、私を『原田地蔵』とクラスメートと一緒にそう呼んだ。
先生はあの時、みんながどんな顔で笑っていたかを知っていますか?
人の不幸を生き生きとした顔で笑う、まるで悪魔のように。
人間は普通じゃないモノを笑い、理解しようともせず蔑む。
救いようのないこんな世界なら……。
消えてしまえばいいのにと思う私も、まるで悪魔だ。
『おい、原田!』
突然、名前を呼ばれて、涙もそのままに振り返る。
そこにいた人物に、私は息を詰まらせた。
……どうして。
目の前にいるのは、私にあだ名をつけ、散々笑いものにした張本人だ。
私のこと、まだからかい足りないの?
わざわざ、追いかけてきたりして、私が君に何をしたっていうの。
震える唇を噛み、震える手を隠すように握りしめた。