春が来たら、桜の花びら降らせてね
「っ……」
中から2つに折りたたまれた便箋を取り出すと、ふわりと視界に朱色の何かがよぎり、机に落ちる。
「………え?」
そこにあったのは、橙から朱へと変わる途中の紅葉だった。
不思議に思って、それを手に取る。
どうして、紅葉……?
ふいに、桜の花びらを降らせてくれた夏樹君の姿が、瞼の裏に浮かんだ。
まさか……ね。
あの笑顔を思い出すと、胸が苦しくなる。
嫌になるくらい君が心の中に住んでいて、そばにいないことに切なくて、泣きたくなる。
私は意識から切り離すようにして、紅葉を片手にゆっくりと手紙を開くことに集中する。