春が来たら、桜の花びら降らせてね
「一人で、考える時間も必要だろ」
「寂しい思いしてたらどうすんだよ、また園崎に絡まれでもしたら……」
「お前な……」
「あいつは、自分の気持ちを言葉にできないぶん、たくさん傷を胸に抱えてる。もう、そんな痛みを負わせたくねーんだよ!」
俺は琉生の言葉を遮って、まくし立てる様に言った。そんな俺に、琉生は呆れるようなため息をつく。
「お前な、冬菜ちゃんはもう小学生じゃないんだぞ」
「でも……っ」
俺の中にいる冬菜は、いつも泣いてる小学生のままの冬菜だ。
それを思い出すたびに、もう泣かせてはいけないという衝動に駆られる。
「もう、自分で選択して進めるし、全部先回りしてやることが、必ずしも優しさとは限らない」
先回りして、冬菜が傷つかないようにすることの、何がいけないんだよ。
それがわからなかった俺は、反抗的な態度で琉生を睨んだ。
「傷ついてからじゃ、遅いんだよ!」
「傷ついて学ぶこともある。だから、こうしてお前と冬菜ちゃんがぶつかって、痛い思いをしたのにも意味があるんだ、きっと」
俺たちがこうなって良かったなんて……俺は思えない。
俺も冬菜も、ただ痛いだけじゃないか。
俺は冬菜を優しさの真綿に包んで、もう誰にも傷つけられないよう守ることが正しいと信じてきた。
なのに今、そのすべてを琉生に否定された気がした。