春が来たら、桜の花びら降らせてね

「夏樹、詳しいことはわからないけど、俺もリュウ坊に賛成かな」

「おい誠、リュウ坊呼びはやめてくれないか」

琉生がこのクラスに遊びに来ていた時から続く、何回目かわからないこのやり取りを無視して、俺は「どういうことだ?」と聞き返す。

「俺と琴ちゃんがずっと仲良しでいられるのは、喧嘩してぶつかった時、2人でこれからこうしていこうって話し合えるからだよ」

誠はそう言って、琴子を愛おしそうに見つめる。

その視線に気づいた琴子もまた、同じように温かい眼差しで誠に微笑んで見せた。

それだけで、この2人の絆の強さがわかる。

「喧嘩しなかったら、きっとお互いの不満にも気づかないし、悲しいとか、そういう辛い気持ちを知らずにいたかもしれない」

「誠君の言う通り!琴子は大好きな人の心を知らないまま生きていくくらいなら、傷ついてもいいから知りたいって思うな」

「傷ついて得るのは、心だよ」

誠と琴子が俺を挟むようにして立ち、励ますように肩をポンポンと軽く叩いた。

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