春が来たら、桜の花びら降らせてね

「俺が出会ってからの夏樹は真っすぐで、好きな女の子に一途で、馬鹿みたいに考えなしの即行動派だ」

琉生……。
こいつらと出会ってからの俺は、そんな風に生き生きとしてたのか。

考えてみれば、冬菜を傷つけてしまったあの過去から、なにもかもが色褪せて見えていた世界。

それが、こいつらと出会って、少しずつ楽しい、嬉しい、そんな風に考えられるようになって、色づいて見えた。

こいつらは、過去ばかり見てしまう俺の、〝今〟を見守ってくれていたんだと気づく。

「だから、もう目をそらすな。俺たちは夏樹がどんな過去を背負っていたとしても……」

「知らないままの方が良かったなんて思わない」

琉生と誠が、安心しろと言わんばかりに頷いてくれる。

「その過去があったから、今の優しい夏樹がいるんでしょ?」

最後に琴子が、俺に嘘偽りのない真っすぐな瞳で言った。

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