春が来たら、桜の花びら降らせてね
「うるさいよおバカ夏樹。話が進まないでしょ」
「話を脱線させたのはお前らだ!」
琴子と一緒になって誠が俺をからかう。
つい、条件反射でいつものような調子で返してしまった。
そういえば俺、さっきまで不安だったのが嘘みたいに軽くなってる。
こいつらと話してたら、悩んでたこと全部が馬鹿らしく思えてきた。
「「おバカ夏樹、その調子!」」
「暗い夏樹なんて、気味悪いからな」
目の前で笑うみんなの顔を見て気づく。
あぁそうか、俺を元気にするためにわざと、このバカ騒ぎの空気を作ってくれていたのか。
慰め方は相変わらずひどいけど、俺は自然に笑えている。
話してよかったと心から思えた俺は「そうヤツだよな、お前らって」と照れくささを誤魔化すように言った。
なんだよ、俺を泣かせるつもりかよ。
思えば不安な時、こいつらはさりげなく俺を励ましていてくれていた。
俺は……ひとりじゃないんだな。
俺のしてきた過去を思えば、俺を理解してくれる人間なんて誰もいないだろう、そう思っていた。
過去に捕らわれて生きていく時間は、孤独だった。
でも……そうか、もっと早く頼ればよかったんだ。
みんなを信じられていなかったのは、俺の方だったのだと思った。