春が来たら、桜の花びら降らせてね
「っ……君が、私の中から早く消えてくれますようにっ」
秋の風が頬を撫でると、ヒヤリとする涙の跡に、重ねて雫が伝う。
お願いだから、この痛みごと風が攫ってくれればいいのに。
君を想うと幸せなのに、絶望も同時に襲ってくるのだ。
なのに、君という存在が心に居座って、なかなか消えない。
「嫌いになれたら……どんなによかっただろうっ」
涙とともに吐き出すのは、君への文句だ。
こんなに好きにさせた君への、告白だ。
「なのに……君が好きっ」
嫌いになるほど君が好き。
恨みたいほど深く、君を想う。
いっそ、出会わなければ良かったのだろうか。
引き返せない恋に泣くくらいなら、他人でいた方が楽だったはずだ。
この恋に、幸せな結末なんてないのに。