春が来たら、桜の花びら降らせてね

「どうして私はっ……うぅっ、君が好きなんだよぉっ」

みっともなく泣いた。
どうせ、誰も私を見ていない。

世界中の誰もが、私という存在を必要としていないから。

いっそ、私と夏樹君から、出会ってからこれまでの記憶が消えてしまえばいいのにと思う。

でもきっと、君と過ごした時間が抜け落ちた私は、喜怒哀楽のない壊れた人形のように、生きていくのだろう。

君がくれた心という贈り物が大きすぎて、今更、私は心を失うことを恐れている。

矛盾している、君を失うことは心を失うのと同じことなのに、私は君を消したいのに、失いたくないと思う。

私が心から望むこと、それは一体何なんだろう。
ううん、望むこと自体が間違いだ。

「君に……さよならをする」

もうきっと、その答えしかないのだ。
どれだけ考えても、君を好きな気持ちも、一緒に幸せになれない事実も、なにもかも変わらないのだから。

私は涙を拭うこともせずに、ぼんやりと空を見上げる。

もう、迷わない。
ちゃんと、決めたから……。


「だから……今だけは、泣いてもいいよね……?」

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