春が来たら、桜の花びら降らせてね
夏樹君に『さよなら』を伝えようと決意した放課後のことだ。
私は夏樹君へ話しかけるより先に、誠君と琴子ちゃんに捕まった。
「ふゆにゃん、この後ついてきて欲しいところがあるんだ」
「俺たちの、一生のお願い」
本当は、今日夏樹くんと話したかったんだけどな。
そう思いつつ、潤んだ瞳で一生のお願いをされてしまった私は、しかたなく頷いてしまう。
時間が経てば経つほど、さよならを告げるのが辛くなる。だからこそ、決意が揺らがないように、今すぐお別れを伝えたかった。
「「じゃあ、行こっか!」」
「っ……?」
これから。どこへ行くんだろう。
私はふたりに促されるまま、帰り支度をして学校を出た。
異変に気づいたのは、既視感のある住宅街に入った所からだった。
住宅街の中にある公園で、遊ぶ子供たちの声。
そのにぎやかな公園の中を抜けて、坂になっているイチョウ並木の道を進んだ先にある建物には、覚えがあった。
どうして……。
そうして、あの場所に向かってるの……?
怖くなって、すくむ足がぴたりと歩みを止めてしまう。
そんな私に気づいた琴子ちゃんと誠君が、こちらをを振り返った。