春が来たら、桜の花びら降らせてね

「もし、冬菜ちゃんが答えを決めてしまってるのだとしたら、もう少し待ってほしい」

「っ……え……!」

どうして、わかったんだろう。
誠君は私の心の声が、まるで聞こえていたかのように言う。

「今日が終わるまでに、ふゆにゃんの今の答えが変わるかもよ!」

今日が終わった時、私はどんな選択をしているのだろう。笑顔で言った琴子ちゃんに、私は戸惑いを隠せない。

それは、私の世界を180度変えてしまう、そんな不安を抱かせた。

それでも歩みを止めなかったのは、もう一度、心の底で誰かを信じてみたいと、浅はかに思ってしまったからかもしれない。




イチョウ並木が立ち並ぶ坂を上がり切ると、やっぱりこの場所だったと思い、今すぐ帰りたい衝動に駆られた。

見慣れた通学路を進むうちに、嫌でも気づいた。

私は門の前で立ち止まると、目の前にそびえ立つ、所々くすんだ白い年季の入った建物を見上げる。

私に消えない傷を刻んだ場所であり、もう二度と訪れたくなかった場所。

そうここは……私の通っていた小学校だった。

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