春が来たら、桜の花びら降らせてね

「うっ……ふ、うっ」

泣きそうになって、俯けば涙で足元が歪んで見える。

そんな私に気づいた2人は、「「ふゆにゃん!」」と同時に私の名前を呼んだ。

顔を上げればいつの間にか、『6ー2』と書かれた教室の前にやってきていた。

ここは……私の苦しみと悲しみの記憶、そのままの形で変わらずにそこに残っていた。

「っ……うっ」

気持ち悪い、吐き気がする。
私はとっさに2人から手を離して、口元を両手で覆う。

ここは……嫌いだ。
私をみっともなく、惨めな気持ちにさせるから。

「この一度だけでいい、信じてアイツに会いに行ってあげて」

誠君のお願いは聞いてあげたいけど、とてもじゃないが無理だ。

心が、体が、全力でこの場所にいることを拒否している。この場に2人がいなかったら、きっと今頃倒れてただろう。
< 225 / 277 >

この作品をシェア

pagetop