春が来たら、桜の花びら降らせてね

「でも、琴子はきっと大丈夫だって信じてるよ」

琴子ちゃん……それでも私は、怖くて足がすくんでしまう。

私はいつも強がってばかりで、何もできない。

そんな無力感に打ちひしがれていると、笑顔の2人が教室の扉を開けて、踏み出せずにいた私の背中をポンッと優しく押した。

「あっ……」

たった一歩、踏み出すだけの強さで。
気づいたら中に入っていた私は、押された反動で少しだけ前屈みに、数歩足が出る。

そんな私に「会いたかった」と小さく迷うような声が、降って来た。

この声は……やっぱり君だった。

ゆっくりと顔を上げれば、窓際の席に手をついて、静かに微笑んでいる夏樹君の姿があった。

あの席は私と夏樹君が初めて同じクラスになった時の席だ。

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