春が来たら、桜の花びら降らせてね

「おっ、笑ったな!」

「へへ……」

夏樹君が、嬉しそうに笑うからだよ。
だから私は、こんなにも幸せなんだ。

まるで、心を分かち合っているみたいに、想いや感情を共有しているような、不思議な感覚があった。

これが、心を通わせるということなのかもしれない、そう思った。

「私も……」

「ん?」

夏樹君の胸に頬を擦り寄せて、呟く。
ささやき声にも近い、私の小さな声にも、夏樹君は気づいてくれた。

「夏樹君に好きって、伝え足りないよ」

話せなかった分、君と離れていた分、好きという気持ちが胸のうちで溢れている。

これを君にすべて伝え終わるまでには、きっと何年、何十年先までかかりそうだ。

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