春が来たら、桜の花びら降らせてね

「なっ……ったく、冬菜が悪いんだからな」

「え……んっ」

唐突に、夏樹君に唇を塞がれた。

こういう時、ドキドキして何も考えられないほど、頭が真っ白になるんだと知った。

心臓は爆発しそうなほど、急速に拍動している。
だけど、こんな時になぜか、私は小学生の頃の夏樹君の姿を思い出していた。

『昼休み、一緒に校庭行こうぜ』

『桜の絨毯つくってやる!』

あの時も今みたいに少し強引で、それでいて優しい手に引かれながら、私に知らない世界、感情を教えてくれた。

私はきっと、夏樹君にもう一度出会うために、今までたくさん辛い思いをしてここまで歩いてきたんだね。

辛い過去も傷も全て、私たちが大人になるために必要なことだった。

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