春が来たら、桜の花びら降らせてね
「……これからは、どんなに急な坂道で、光が無い過酷な道でも、手ぇ繋いで、ずっと一緒に歩いていこう」
「あっ……うんっ」
嬉しくて、またブワッと涙が溢れる。
この世界は、歪なモノを嫌うし、美しい物ばかりじゃないけれど。
夏樹君と一緒なら、世界は色づき、輝き、美しく見えるのだろう。
だから君と、この世界を共に生きていきたいと思う。
「たくさん泣いて笑えよ、冬菜」
「夏樹君……」
「俺にだけ見せる表情も、ぜんぶ知りたいって思うよ」
夏樹君は嬉しそうに笑いながら、私の両頬を包み込む。そして、額を重ねて、見つめ合った。
「きっと、夏樹君が私のことを一番知ってるよ」
だって、君が私の心を開く。
いつもそばにいてくれる君が、まだ見ぬ私の表情も感情も、最初に見つけてくれるのだろうと思う。