春が来たら、桜の花びら降らせてね

「……これからは、どんなに急な坂道で、光が無い過酷な道でも、手ぇ繋いで、ずっと一緒に歩いていこう」

「あっ……うんっ」

嬉しくて、またブワッと涙が溢れる。
この世界は、歪なモノを嫌うし、美しい物ばかりじゃないけれど。

夏樹君と一緒なら、世界は色づき、輝き、美しく見えるのだろう。
だから君と、この世界を共に生きていきたいと思う。

「たくさん泣いて笑えよ、冬菜」

「夏樹君……」

「俺にだけ見せる表情も、ぜんぶ知りたいって思うよ」

夏樹君は嬉しそうに笑いながら、私の両頬を包み込む。そして、額を重ねて、見つめ合った。

「きっと、夏樹君が私のことを一番知ってるよ」

だって、君が私の心を開く。

いつもそばにいてくれる君が、まだ見ぬ私の表情も感情も、最初に見つけてくれるのだろうと思う。
< 258 / 277 >

この作品をシェア

pagetop