春が来たら、桜の花びら降らせてね
「あ……ははっ、毎年やってやるって!」
「ふふっ」
「でも、そんなに気に入ったのかよ?」
不思議そうに言う夏樹君に、私は笑顔で頷いた。
「私と夏樹君を繋いでくれたのは、いつも桜の季節だったなぁって思ったから」
「あぁ……そういえば、そうかもな。ならさ、毎年この季節には、桜の花びら降らせてやるよ。それこそ、シワシワのじいさんとばあさんになってもな」
くしゃりと、破顔して笑う君の笑顔が大好きだ。
夏樹君の言うとおり、シワシワのおばあさんになっても、君の隣でその笑顔を見続けたいと思う。
「それなら私は、夏樹君に何を返せばいい?」
貰ってばかりは嫌、私も夏樹君になにかプレゼントしたい。
その言葉を聞いた夏樹君は、嬉しそうな顔をして、私の髪を優しく、愛おしそうに撫でた。
「冬菜が、笑ってくれればいい」
「っ……欲がないよね、夏樹君は」
「それは間違いだ。俺、冬菜のことに関しては欲深いから、覚悟しとけな」
夏樹君とこうして想いが通じ合った秋。
これまでたくさん傷ついて泣いたけど、もう、この世界に絶望するのはやめよう。
絶望するくらいなら、私は夏樹君とその世界を変える。
一緒に幸せになる道を探す。