春が来たら、桜の花びら降らせてね
✲*:。epilogue.。:*✲
春が来たら、桜の花びら降らせてね
【冬菜side】
あっという間に道行く人たちの羽織り物が一枚一枚分厚くなり、日が沈むのも早くなった。
あと一週間で12月がやってくる。
相変わらず、夏樹君以外の人とは話せないし、いきなりなんでも解決とはいかないけれど、私の心はずっと晴れやかだった。
話せなくても、孤独じゃない。
私のそばには、夏樹君や琉生君、琴子ちゃんや誠君がいてくれるから、冬の寒さも吹き飛ばすくらいに心が温かかった。
「冬菜、寒くないか?」
「寒いかも」
私は、小さな声で答えた。
家に迎えに来てくれた夏樹君と、学校への道のりを歩く。
昨日から今日の早朝にかけて初雪が降り、見事に積もっていた。
11月の関東で初雪が降るのは、54年ぶりだったらしく、朝のニュースはその話題で持ちきりだったのを思い出す。
まるで、冷凍庫の中を歩いているようで凍えそう……。
通学路の桜並木も、木々の葉はすっかり落ちて、代わりに雪が乗っかり、白い桜を咲かせている。