春が来たら、桜の花びら降らせてね
「冬菜、手ぇ繋ごうぜ」
「あっ……うん」
夏樹君の温かい手が私の手を包むと、急に恥ずかしくなって少し蒸し暑く感じた。
夏樹君とはあの日、一緒に歩んでいこうと決めた日から恋人同士になった。
夏樹君は私の初恋であり、初彼氏でもある。
「冬菜の手って、小せぇよなー」
「そう、かな?」
「おー、少なくとも初めて冬菜の手ぇ引いた時は、俺もまだガキだったから、手も身長差もそんなに感じた事なかったんだけどよ」
そういえば……。
夏樹君と再会した入学式の日、夏樹君は私に『あー……お前って、そんな小さかったんだな』って、言ったんだっけ。
確かに小学生のころに比べれば、大きくなったんだろうけど。
「再会した冬菜は、予想よりちっこかった。そんでなにより……綺麗になってた」
「えっ」
綺麗になってたって……。
急に褒められると、だめだ。
むせかえるような花に囲まれているみたいに、息苦しくて甘くて、頭がぽーっとしてしまう。