春が来たら、桜の花びら降らせてね

「俺さ、今だから言うけど、冬菜が初恋だったんだわ」

「え!」

さっきから衝撃の事実ばかりで、私は「えっ」とか「え!」としか言えなくなっている。

夏樹君みたいなカッコいい人が、どうして私に初恋なんてしたのだろう。

あの時の私は、今まで以上に喋らないし、笑わないし、愛想もよくなかった。

薄っすらだけれど、隣の席になった夏樹君が話しかけてくるたびに、全力で逃げ回っていた覚えもある。

好きになられる要素が、何ひとつ思い浮かばない。

「小学6年になって冬菜と隣の席になってから、ずっと気になってて、気づいたら冬菜のことばっか考えてた」

「でも、私はその、全然話さなかったでしょう?」

場面緘黙症の症状が一番強かった時期だから、話しかけられただけで逃走してたのに。

何度も言うけれど、夏樹君はどうして私を好きになったのだろう。

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