春が来たら、桜の花びら降らせてね
「だからだよ」
「……え?」
「話さないから、初めは単に話してみたいって興味が沸いた。でも、いつからだったか……何か言いたそうで、悲しそうで、諦めたように背を向ける冬菜のことを、笑顔にしてやりたいって思った」
「夏樹君……」
そんな風に、思っていてくれたんだ。
あの時は、どうして私に構うんだろうって、それだけだった。
なのに、夏樹君が私を必死に追いかけてきてくれた理由がわかって、嬉しさがこみ上げてくる。
「いつの間にか、恋に落ちてたんだな、俺は」
「夏樹君……」
「そんな一番大切な女の子を傷つけた俺は、もう二度と冬菜と結ばれることなんてねーと思ってた。でも、今こうして冬菜の彼氏でいられることが、すげー幸せだ。あんがとな、冬菜!」
二カッと笑った夏樹君が、愛しそうに繋いだ手をギュッと握る。
それに、なんだか泣きそうになった。
私と夏樹君が一緒にいられることは、今まで辛い道を歩いてきた私たちへの、神様がくれた奇跡だと思う。