春が来たら、桜の花びら降らせてね

「夏樹君、会いに来てくれてありがとう」

「っ……冬菜……」

夏樹君の声が、一瞬震えた気がした。
涙目で、それでも懸命に笑う君が、心から愛しいと思う。

「俺たち、離れてた分まで幸せになろうな」

「うんっ」

夏樹君と笑顔を交わすと、その手に引かれて学校へと向かう。
どうか、この幸せがずっと消えませんように。

時々不安になるけれど、その手をギュッと握ると不思議と消えていくから不思議だった。




学校へやってくると、教室には琴子ちゃんと誠君の他に、琉生君の姿があった。

「どわわっ、ふゆにゃん来たよ!」

「琴ちゃん、声大きい!」

「2人とも、同じくらい声がでかいぞっ」

私たちが教室に入った途端、なんだかみんながソワソワしだす。

私たちは、危険を察知して教室の入り口で足を止めた。

うん……?
みんな一体どうしたんだろう、今来たらなにかまずかったのかな。

不安になって隣に立つ夏樹君の顔を見上げると、「あいつら……下手か!」と言って、なぜか額を押さえて呆れていた。

私はどうしたのか尋ねるように、夏樹君のワイシャツの袖をクイッと引っ張ると、首を傾げる。

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