春が来たら、桜の花びら降らせてね

「……作戦?」

あ、ちゃんと声が出た。
あの、喉を締め付けられるような感覚は、もうなかった。

私の体が私の元に戻ってきたかのように、自由に声が出る。

「作戦って、なんの?」

「冬菜を笑わせる作戦のことだよ」

ホッとして聞き返せば、夏樹君が教えてくれた。

「どうして?」

「場面緘黙症を克服したって人のブログとか見てたら、クラスメートに笑わせられて、声が出るようになったっていうのがあったんだ」

今度は琉生君が説明してくれる。
そうだったんだ……知らなかった。

私、期待するだけ無駄だって思っていたから、いつの間にか方法を探すことすら止めてしまってた。

最近では、私のありのままを好きになってくれる恋人、友達が出来たからかな、焦っても無かったんだと思う。

でもみんなは、私のために希望をあきらめずにいてくれてたんだ。

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