春が来たら、桜の花びら降らせてね
「だから、裏とか全然ねーの。言葉のまんま、信じて大丈夫だ」
「…………」
それは……怖い。
その言葉がたとえ本当だとしても、過去が私を不安にさせる。
誰かに受け入れられたいと、望めば望んだぶんだけ、失った時の痛みは大きく、傷跡は深く残るから。
「まぁ……気が向いたら、友達になってあげてくれよ」
「…………」
私はそれには何も答えられず、地面へと視線を落した。
そんな時だ、夏樹くんは突然、「そうだ!」と声を上げた。
「このままだとちょっと不便だな。うしっ、スマホ出せ」
よくわからないけど……気を遣ってくれてるみたいだ。
わざとらしく明るい声を出す夏樹君に、気を張っていたはずが脱力してしまう。
この人からは、人間の汚さを感じない。
この世は汚いモノで溢れているのに、夏樹君は奇妙なくらい、心が美しいのだ。
皮肉ばかり、過去にとらわれて心を捨ててしまった私には、夏樹君のように眩しく、綺麗な存在がひどく恐ろしく感じた。
「冬菜、早く!」
私は急かされるまま、胸ポケットに入れていたスマホを夏樹君に手渡した。
夏樹君、何するつもりなんだろう……。