春が来たら、桜の花びら降らせてね
「ん?」
スマホを操作しだす私の手元をのぞき込む夏樹君。
『イチゴチョコ、おいしい』
打ち終わると、画面を見せた。
いきなり、何を話せばいいのか話題も浮かばなかった私は、くだらないと笑われるかもしれないが、気持ちを伝える。
まだ、人にどう思われるかが気になって怖い。
だから、当たり障りのない言葉からだけれど、これが私の精一杯だ。
「イチゴチョコ……おいしい?」
それを見た夏樹くんの顔は、それはもう漫画みたいにキョトンとしていた。
変なことを言ってしまったのかと不安になっていると、夏樹君は「ぶは!」と噴き出す。
「そうか、うまかったか!」
「…………」
破顔する笑顔に、不覚にも目を奪われた。
人間らしい、素の夏樹君を見れた気がして、木々が揺さぶられるような気持ちになる。
「ぶぶぶっ、くくっ……」
夏樹君はツボに入ってるのか、笑い続けている。
私は恥ずかしくなって、また文字を打つと、夏樹君の目の前にスマホの画面を突き出した。