春が来たら、桜の花びら降らせてね
「つか、なに手ぇ繋いじゃってんだよ」
「嫉妬か、夏樹」
「いいから手ぇ離せ。そんでもって、お前はこれでも食ってろ」
そう言って琉生くんに押し付けたのは、リュウ坊のご飯。
それをげんなりとした顔で受け取る琉生君は、「はいはい」と言って少し離れた柵のような場所にリュウ坊を連れていく。
柵は上が開いており、周りを囲っただけのもので、そこでご飯をあげ始めると、お客さんがわらわらと集まり、上からリュウ坊をのぞき込んでいた。
「冬菜も、浮気してんなよな」
な、浮気って……何を言ってるだ、夏樹君は。
そもそも、私と夏樹君は付き合ってないのに、浮気とか成立しないのでは?と疑問に思う。
「手ぇ握んなら、俺のにしとけ」
夏樹君が「ほら」と急かすように私に手を差し出す。
い……いやいやいやっ。
改めてそうされると、意識するから恥ずかしい。
どうして、こんな流れになったのかと、頭を抱えたくなった。