春が来たら、桜の花びら降らせてね
「琉生はよくて、俺はダメか?」
「うっ……」
その聞き方は、ずるいと思う。
私がイジメたみたいな気になって、胸がキュッと締め付けられる。
仕方なく折れて、差し出された手にお手をするようにポンッと手を乗せた。
「冬菜はさ……無防備すぎんだよ」
その手をギュッと握られる。
え……?
だって、夏樹君が手を握れって言ったのに。
夏樹君の言葉と仕草に、翻弄される。
なのに、夏樹君は余裕そうで、慌てているのが私だけなのだと思うと、少しだけ寂しくなった。
「簡単に触らせんなよ。男はみんな、甘い顔してどうしようもない妄想ばっかしてんだから」
どうしようもない妄想って……。
そんな疑問を言葉にした瞬間、心停止してしまいそうで、聞けなかった。
見つめられる瞳の、もっと奥まで吸い込まれそうな錯覚に陥る。
「……俺だけにしとけ、な?」
『なんで、夏樹君はいいの?』
素直に気になったことを聞いてみる。
だって、夏樹君だって男の子だ。
君がよくて、他の人じゃ駄目な理由を、私は知りたい。
その強い衝動に突き動かされる。