春が来たら、桜の花びら降らせてね
「ほら、リュウ坊も冬菜のこと待ってんぞ」
夏樹君の声に私はコクンッと頷いて、リュウ坊を抱きしめる。
今日も私は、君の心を騙す嘘に、騙されたフリをする。
「なぁ冬菜、楽しいか?」
楽しい……。
そう思うこと自体が久しぶりで、自分の気持ちがはっきりわからない。
けれど、夏樹君がくれた放課後からの数時間。
それは、いつもの変わり映えのしない見慣れた毎日とは違って……。
そう、まるでネバーランドに来たみたいに、世界が色づいて見えた。
世界が、キラキラと魔法みたいに輝いて見えた。
『夏樹君は、ピーターパンみたい』
「ピーターパン……俺が?」
『夏樹君と一緒にいると、胸にドキドキとワクワクが溢れてくるんだ』
気づけば、そう文字を打って夏樹君に見せていた。
今、私の感じている気持ちに、答えが欲しかったからかもしれない。