春が来たら、桜の花びら降らせてね

「っ……!」

えっ……嘘でしょう。
私が話せないこと、知らないの?
カタカタと、手が震えだす。

どうしよう、どうしよう……!
恐れていたことが、起こってしまったと思った。

「原田さん?どうしたの、早く読みなさい」

でも、みんなが見てる。
早くしないと、落ち着けばきっとできるはずだから。

何度も何度も、自分に言い聞かせる。
とりあえず立ち上がって、教科書を手に話してみようと口を開けた。

「……あ……あっ」

だけどやっぱりダメだった。
喉を強く絞められているみたいに、声が出ない。

ただ、呻いてるだけ、虫の声のように小さく鳴いているだけ。

教室に纏う空気が、張り詰めたものに変わった気がした。


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