春が来たら、桜の花びら降らせてね
勝利には、乙女の祝福を
【冬菜side】
いかにも初夏らしい澄み渡る空、蝉の大合唱が毎日のように教室の窓から聞こえてくる7月。
天候にも恵まれた、体育祭の日がやってきた。
「…………」
「あれぇ、冬菜ちゃんなんか顔暗くない??」
教室で開会式までの時間を潰していると、琴子ちゃんがついついと人差し指で頬を突いてくる。
あれから、少しずつだけど、琴子ちゃんと誠君にも緊張しないようになった。
夏樹君と話せるようになってから、話したいという気持ちが強くなった私は、積極的にカウンセリングにも参加した。
だからといって、ふたりとはまだ話せたわけじゃないけれど、少しずつその成果が出たのだと信じたい。
今、話せるのは唯一夏樹君だけ。
しかも、他人の目がない場所で、ふたりっきりじゃないと喋れないという制約付きだ。