春が来たら、桜の花びら降らせてね
「うおあっ!!」
するとなぜか、盛大に驚かれた。
パッと離れた手に、目が点になる。
えっ……もしかして、触っちゃだめだった?
拒絶された事実に、少なからずショックを受けていると、夏樹君は「違う!」と慌てたようにまた叫ぶ。
なにが違うのかと夏樹君の瞳に問えば、「うっ」と呻かれる。
そんなに身構えられると、まるで、幽霊にでもなったかのような気分だ。
「ふっ、ふふ、不意打ちはやめろっ、心臓に悪いから!」
『ごめん』
「勘違いすんなよ?嫌とか、そういうんじゃねぇーからな?」
じゃあ、なんだったの?
さすがに、振り払われると不安になる。
夏樹君に見せていたスマホを力なくおろして、両手でギュッと握りしめた。
「夏樹は、極度の照れ屋なんだよ」
すると、この場にいるはずのない声が聞こえた。
振り返れば、私たちと同じジャージ姿の琉生君がいる。